これまで企業は、顧客と継続的・長期的な関係を築くことを目指し、様々な施策に取り組んできました。
その中で、近年、顧客ロイヤルティの向上・ファン顧客創出に向けて、NFT等のブロックチェーン技術を活用した取り組みが、顧客ロイヤルティ向上のための有効な手段として注目され始めています。
NFTは、web3(ブロックチェーン技術を活用した分散型ウェブ)上で、特にデジタル資産の所有権を確立するための重要なツールとなっています。NFTは、ブロックチェーン上に記録され、それぞれが一意の情報を持つため、特定の個人がデジタルアセットを所有していることを証明することができるという特徴を持ちます。
すでに国内外では、複数の企業がNFTを活用した先進的な取り組みをスタートしています。では、NFTを活用することで、具体的にどのようにして顧客ロイヤルティを向上することができるようになるのでしょうか。
事例を交えてより詳しく知りたい方は、以下よりレポートをダウンロードしてご覧ください。
レポート3点セットを配布中!
- ロイヤルティプログラム成功事例の設計図
- web3活用事例レポート
- Z世代×web3マーケティング
本記事では、6つの視点から紹介します。
1. デジタル資産の所有が創り出す新たなブランドへの繋がり
これまでの問題点
企業は、これまでも会員サイトやロイヤルティアプリを通じて、ポイントやデジタル会員証を活用した施策に取り組んできましたが、ブランドが提供するデジタル資産を、ユーザーが”所有”するという概念は存在していませんでした。
NFT活用による変化
NFTを活用することで、顧客がデジタル資産を”所有する”ことができるようになります。NFTはブロックチェーン上に公開されており、その一つひとつがユニーク(特有)です。そして、NFTは個人が所有するデジタルウォレットに紐づくため、ユーザーはNFTの所有権と希少性を証明することができるのです。
このようにNFTのもつ恒久性と希少性という特徴から、”保有する”という感覚が生まれ、ユーザーはNFTを発行する企業やブランドに対して強い愛着を感じるようになります。NFTは唯一性があり、NFTを持っていることが自分と企業・ブランドとの繋がりを証明するとともに、NFTを通じて自分自身のアイデンディティを証明することもできるのです。
NFT活用シーン
アパレル企業A社は、フィジカルアイテムを購入した方に、同じデザインのデジタルツインNFTを発行する企画をスタートしました。
顧客Xは、A社のスニーカーを購入して、その箱についているQRコードを読み取ると、同じデザインのNFTを入手出来ます。顧客Xは、そのスニーカーがとても気に入り、毎日のように履いていったため年季が入ってきましたが、デジタル空間上では半永久的に同じデザインのNFTを持ち続けることができます。
A社のスニーカーのファンになった顧客Xは、その後もA社のスニーカーを集めていきました。そして、フィジカルアイテムを持っていたことをデジタル空間上で証明する自分だけのコレクションを作り上げていくことができるようになったのです。
2. NFTを活用したコミュニティ形成で熱狂的なファンを獲得
これまでの問題
従来のロイヤルティプログラムでは、企業から顧客への情報提供の仕組みはあるものの、顧客同士のコミュニケーションが希薄であり、顧客から企業へのフィードバックや、顧客同士のコミュニケーションが限定的でした。
NFT活用による変化
NFTが持つ売買可能性(デジタルデータを売買することができるという特徴)により、顧客がNFTを集める金銭的なインセンティブが生まれます。さらに、NFTをやり取りするマーケットが形成されるととともに、顧客間でNFTを売買したり揃えたりするためのコミュニケーションが活発化し、顧客同士のつながりが深まっていきます。
このように顧客間でのコミュニケーションが活発化することで、顧客が企業やブランドを意識する機会が増え、リピート購入や口コミ投稿の機会が増えることが期待できます。その結果、ブランド力の向上や新規顧客の獲得に繋がります。
このようにNFTを介して生まれたコミュニティに対して、企業が既存の商品の感想や新しい商品のアイデアを募り、顧客と共に商品やサービスを作っていくこともできるでしょう。このように、企業にとっての顧客が、商品・サービスを提供する対象から、商品・サービスを共に作っていくパートナーに変わっていくのです。顧客は当事者意識を持って、ブランドの商品・サービスを考えるようになり、より企業に対するロイヤルティを高めていくでしょう。
NFT活用シーン
お菓子メーカーB社は、QRコードを読み取った顧客に、オンラインファンコミュニティへの参加権がついたNFTスタンプをプレゼントします。期間限定で5つのスタンプを集めた顧客には、工場見学チケットが付いたスペシャルNFTをプレゼントする企画も開催されました。
顧客Xは4つのNFTスタンプを手に入れましたが、残りの1つを揃えることが出来ませんでした。そこで、オンラインファンコミュニティ内で、NFTスタンプを2つ獲得したと投稿していた顧客Yにコンタクトを取り、1つのNFTスタンプをマーケットプレイスで購入しました。
その後、顧客Xは限定の工場見学に参加し、B社の歴史やお菓子づくりへのこだわりを知り、B社のファンとなりました。また、顧客Yは、NFTを通じて金銭的インセンティブがあることを知り、B社の商品を好んで購入するようになりました。
B社は、当社が発行したNFT保有者のみが参加できるオンラインコミュニティで、新しい商品のアイデアコンテストを開催しました。顧客Xは、以前やり取りをしたことのある顧客Yと協力してアイデアを応募したところ、なんと最優秀賞を受賞し、実際に期間限定で商品化されました。
3. 顧客接点の拡大でブランド好感度を飛躍的に向上
これまでの問題点
これまでは企業と顧客との接点は、商品やサービスの利用時や、企業からの情報・広告の発信時に限られていました。企業は、顧客との接点を得るために、大きな予算を投じて、広告を打ったり、ウェブサイトやアプリ上でポイントプログラム/ロイヤルティプログラムを設けてきました。
NFT活用による変化
NFTは、共通の規格(例:ERC-721やERC-1155)に基づいて作成されるため、異なるシステム・プラットフォーム間で自由にデータのやり取りができる「相互運用性」という特性を持ちます。
この特性により、他のブランドやIP(知的財産(例:アニメ・漫画のキャラクター等))とコラボレーションをした施策を容易に打つことができます。ある企業が発行したNFTは、他のサービス上でも活用できるため、企業間のコラボレーション時にシステムの統合や改修が不要となるのです。
また、特定のNFTを保有する人に限定して体験、デジタルアイテム等を提供する仕組みである「トークンゲーティング」により、「自社が発行したNFT」と「他社(ブランド・IP)が発行したNFT」の両方を持つユーザーだけに、限定商品を獲得する権利を与えることもできます。
こうしたコラボ施策により、他のブランドやIPを目当てにしたユーザーが、自社のサービスを知り利用することで、顧客との接点を拡大できます。さらに、ユーザーが好きな他のブランドやIPとコラボしていることを知り、自社への好感度も高めることが期待されます。
NFT活用シーン
飲料メーカーC社は、スポーツチームD社とコラボして「飲料メーカーC社が発行したNFT」と「スポーツチームD社が発行したNFT」の両方を持っているユーザーだけを、スポーツチームD社の試合の特別観覧シートに招待するイベントを企画しました。飲料メーカーC社のNFTは、期間限定でスポーツチームとコラボしたデザインの商品を5つ購入することで獲得することが出来ます。
顧客Xは、スポーツチームDの熱狂的なファンであり、この特別な試合の観覧席になんとしても招待されたいと思い、この期間には飲料メーカーCの商品ばかりを購入するようになりました。
その後も、飲料メーカーCとスポーツチームDはコラボ企画を何度も実施したため、スポーツチームDの大ファンである顧客Xは、飲料メーカーCの商品ばかりを購入するようになり、自然と飲料メーカーCの商品の味やブランド自体にも愛着が湧き、好感度が向上しました。
このように、NFTの持つ相互運用性を活かし、企業とブランド、企業と企業が容易にコラボレーションすることで、これまで企業単独では接点が持ちにくかった顧客との接点を拡大し、ブランドの好感度を高めることができるのです。
4. パーソナライズされたエクスペリエンスで顧客満足度を向上
これまでの問題点
これまでも各企業は自社の持つデータを駆使して顧客に最適なコンテンツやマーケ施策を提供してきました。
このような状況下においては、企業はこれまで接点を持った顧客の断片的な情報しか集めることができず、顧客が日常的にどのようなものを好んでいるのか、自社のサービス利用時以外にはどのようなことをしているのかなどを把握することは難しい状況にありました。
NFT活用による変化
web3において、顧客のオンライン行動や消費データは、デジタルウォレットに記録されます。デジタルウォレットには、顧客が所有するFT(暗号資産)やNFT(デジタルアートやゲーム内アイテムなど)が含まれます。
企業は、顧客のデジタルウォレット内のデータを解析することで、顧客がどのようなNFTコレクションを集めているのか、どの仮想通貨を保有しているのかを把握することができます。そして、今後、NFTの活用範囲が広がっていくことにより、デジタルウォレットの情報から、顧客の趣味嗜好、関心事、価値観を推測することができます。
これらの情報をもとに、企業は顧客に合わせてパーソナライズされた体験やサービスを提供することが可能になります。
こうしてパーソナライズされた体験を通じて、顧客は自分にぴったりの特別なサービスが提供されていると感じ、その結果、顧客のロイヤルティを向上させることが可能になります。
NFT活用シーン
旅行事業者E社は、顧客Xのデジタルウォレット上のデータを分析すると、顧客Xは全国の温泉地で発行されるNFTを集めていることが分かりました。さらに、毎年5月のGWには、長野県の温泉地に旅行に行っていることも分かってきました。
そこで、旅行事業者Eは、顧客Xが次のGWにも、長野県の温泉地に行く旅行プランを立てているはずだと考え、長野県の温泉旅館の割引チケットの案内を送ります。
顧客Xは、ちょうどGWにいく長野県の温泉旅館を探していたところだったため、送られてきた情報をもとに、割引チケットを使って即座に宿泊を予約しました。
5. シームレスなサービスへのアクセスで顧客の利便性を高める
これまでの問題点
従来、ユーザーは各サービスやプラットフォームを利用するために、個別のアカウントを持ち、パスワード管理を行う必要がありました。そのため、企業は顧客にサービスを利用してもらう際に、「会員登録」の手間がハードルとなっていました。
NFT活用による変化
NFT活用により、顧客は一つのデジタルウォレットを使用して、多種多様なサービスに容易に接続することが可能になります。個々のサービスで新たにアカウントを作成したり、パスワードを管理したりする煩わしさを取り除くことができるのです。具体的には、顧客はすでに所有しているデジタルウォレットを各サービスに接続するだけで、複数のプラットフォームに迅速にアクセスできるようになります。
このような変化により、企業は顧客との関係構築における障壁を大幅に軽減し、顧客体験を向上させることが期待されます。これは、顧客が複数のサービスをスムーズに行き来でき、一貫した体験を享受できる新たな顧客体験の構築に貢献します。
NFT利用シーン
顧客Xは、夏休みの連休の北海道旅行に向けて、ホテル会社F社の予約サイトに、デジタルウォレットを接続して予約し、宿泊チケットNFTを獲得しました。
さらに、移動手段を確保するために、航空会社G社・鉄道会社H社・レンタカー会社I社のサイトにデジタルウォレットを接続して、それぞれのNFTチケット購入やレンタカー予約を完了さました。いずれも一つのデジタルウォレットを接続するだけで予約ができるため、IDやパスワード入力の手間なく、スムーズに旅行の手配をすることが出来ました。
航空会社G社は、NFT会員証を持っているユーザーに対して、ラウンジを無料で利用できる仕組みをスタートしていました。顧客Xは、NFT会員証をデジタルウォレット上に持っていたため、搭乗前時間にラウンジの受付で、NFT会員証を持つことを示すQRコードを、表示して読み取らせると、スムーズにラウンジに入ることができました。
6. メタバースへの接続によるデジタル上の新たな体験価値の創造
これまでの問題点
インターネットのこれまでの状況では、プラットフォームやサービスが独立しており、相互運用性が低く、デジタルアセットの利用や共有が難しかったため、ユーザーの利便性が制限されていました。
NFT活用による変化
共通規格を持つNFTは、デジタルアセットの所有権や独自性を保証しており、異なるサービスへの移動や活用が容易にできるようになります。
例えば、ゲームで利用できるキャラクターやアイテムをNFTとして保有することで、ユーザーは別のメタバース上のゲームでも同じアイテムを活用できます。また、メタバース内で開催されるコンサートにおいて、NFTを活用した限定アイテムを身につけている人だけが入場できる特設ステージを設けることもできます。さらに、メタバース上で、特定の企業のアイテムを持っている人同士で、会話が生まれ、限定のイベントに参加するようなシーンも生まれるはずです。
このように、web3時代におけるメタバースへの接続は、顧客に対して新たな体験価値を提供します。そして、顧客は、デジタル空間での企業やブランドをより強く意識し、ロイヤルティを高めていくのです。さらに、相互にエンゲージメントを高めあうコミュニティを形成していくことが期待できるでしょう。
NFT活用シーン
アパレル会社J社は、人気スニーカーを購入した顧客に対して、同じデザインをしたNFTを発行する仕組みを取り入れました。このNFTは、複数のメタバース上のゲームで利用できます。
顧客Xは、メタバース上のレースゲームで、スニーカーデザインのNFTを自分のアバターに身につけると、アバターのスピードが上がり、良い順位でゴール出来ました。さらに、他のプレイヤーからスニーカーを誉められ、顧客Xはこのスニーカーに対して愛着が湧いてきました。
さらに、顧客Xはメタバース上の冒険型RPGゲームでも、同じスニーカーのNFTを使用出来ます。ゲーム内では、このスニーカーを身につけているプレイヤーのみが、隠しエリアにアクセスできます。顧客Xは、隠しエリアを探検し、ゲーム内での希少なアイテムを入手しました。
この連載を通じて、NFTが企業と顧客の絆をどのように変革し得るか、6つの視点から深く掘り下げて参りました。NFTの所有体験は、顧客との新たな関係性を築き、ブランドへの深い愛着を生み出す可能性を秘めています。
ProofXは現在、web3時代のロイヤルティプログラムを共に創っていく企業の皆様を募集しています。共に日本の先頭を走ることにご興味のある皆さまからは、ぜひ以下のフォームよりご連絡ください。
NFT活用事例に興味を持たれた方は、当社がまとめた「顧客ロイヤルティを高めるweb3活用事例レポート(2023年)」をダウンロードしてご覧ください。
この資料では、日本国内外の様々なNFT活用事例やNFTを利用したマーケティング戦略、地域活性化の取り組みなど、効果的なNFT活用方法について詳しく解説しています。資料ダウンロードは無料ですので、この機会にぜひご活用ください。