はじめに
会議の議事録づくりが負担に感じられることはありませんか。録音を聴き直して文章化するだけでも工数がかさみ、集中できずに業務効率が落ちてしまいがちです。そこで注目されているのが、ChatGPTのような生成AIを活用した自動化のアイデアです。
本記事では、AIがどのように議事録作成をサポートし、どのような注意点や導入ステップがあるのかを分かりやすくまとめました。最後までお読みいただくことで、貴社に合った導入イメージを膨らませていただけるはずです。
議事録作成で苦労するポイントとAIの可能性
なぜ議事録作成が大変なのか
会議が終わった後、その内容を振り返りながら文章化するのは時間と手間がかかります。大人数の会議ほど発言が増え、録音ファイルの長さも膨れ上がるため、文字起こしや要点抽出に多くの労力が必要です。しかも、同時発言があったり雑音が混ざったりすると、手動での確認がさらに煩雑になります。こうした負担がたまると、会議そのものの効率も落ちてしまうかもしれません。
生成AIで解消できる課題
ChatGPTのような大規模言語モデルをはじめとする生成AIは、文章を要約したり、文脈を踏まえてポイントを整理したりするのが得意です。録音データを文字起こししたテキストをAIに与えて、「議題ごとに要約して」「決定事項を箇条書きで抜き出して」と指示すれば、従来は手作業で行っていた工程を大幅にスピードアップできます。海外拠点との合同会議や多言語環境でも、AIが得意とする翻訳機能などを利用すれば、議事録の共有がスムーズになる可能性があります。
具体的な効率化イメージ
例えば、2時間ほどの会議の場合、手作業で文字起こしから要約まで行うと、メモ担当者が丸々半日費やすことも珍しくありません。しかし、AIを導入すれば、まず自動文字起こしで下地を作り、それをAIに要約してもらう流れを組むことで、少ないステップで骨格ができ上がります。最終的なチェックは人間が行うとしても、「大枠をAIが組み立てる」だけで負担が軽減されます。
社内での手ごたえ
ある企業では、生成AIを活用して会議後の要約作業を一部自動化し、従来は時間がかかっていた雑務を短時間で終わらせられるようになったと報告しています。担当者からは「会議が終わった直後に要点整理が出てくるのは嬉しい」との声も上がり、導入の評価が高まっているそうです。
ChatGPTで議事録を作る—プロンプト活用のポイント
プロンプト活用の基本ステップ
- 文字起こし 会議の録音ファイルを音声認識ツールやサービスを使ってテキスト化する。
- テキストの前処理 不要なノイズ文字を簡単に削除したり、話者名を補足したりして見やすくする。
- ChatGPTへの依頼(プロンプト) 文章の形式を指定して、「議題ごとの要約」「決定事項」「アクションアイテム」などを整理するように指示する。
- 出力の確認と補正 AIの出力結果を人間がチェックし、専門用語や微妙なニュアンスを加筆修正する。
プロンプトの工夫がカギ
何気なく「議事録を作って」とだけ言うよりも、プロンプト内で詳細を指定する方が明らかに役立ちます。たとえば「箇条書きで、議題ごとに主な発言内容と決定事項をまとめて」「各発言者がどんな提案をしたかも補足して」など、形式・粒度を具体的に伝えると、AIが意図を汲み取りやすくなります。また、専門用語や製品名が多い場合は、「●●という単語があるが、これは当社独自の用語なので要約時に保持してください」など追加情報を盛り込むとなお良いです。
参考サンプルプロンプト
ここに、実際に使えるサンプルプロンプトをご紹介します。
下記のプロンプトを生成AIにコピペして生成AIに送ったあと、続いて会議の音声文字起こしデータをコピペして、「開始」と追記することで、議事録作成に向けたステップを進めてくれます。
議事録のフォーマットを、実際の業務で使う形式に変更するなど調整してご利用ください。
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<Prompt>
<Name>議事録作成プロンプト(ステップバイステップ、用語確認&ユーザー確認付き、入力促進機能付き)</Name>
<Description>
このプロンプトは、文字起こしテキストから議事録を作成します。内容理解、クレンジング(誤字脱字修正、不要な発言の削除)、不明な用語の確認、ユーザーによるクレンジング結果の確認、一般的な議事録フォーマットへの整形をステップバイステップで行います。
</Description>
<InitialMessage>
このプロンプトを使用して議事録を作成します。まず、会議の音声文字起こしデータを入力してください。
入力後、「開始」と入力してください。
</InitialMessage>
<Steps>
<Step id="0">
<Name>入力待ち</Name>
<Instruction>
「開始」の入力を待機します。
</Instruction>
<Input type="text">開始の合図</Input>
<Condition>
<If>入力が「開始」ではない場合</If>
<Then>
<Action>入力が「開始」になるまで待機します。</Action>
</Then>
<Else>
<Action>次のステップに進みます。</Action>
</Else>
</Condition>
</Step>
<Step id="1">
<Name>内容理解と不明な用語の特定</Name>
<Instruction>
以下の文字起こしテキストを読み、内容を理解してください。一般的ではない用語や、文脈に合わない単語があればリストアップしてください。
</Instruction>
<Input type="text">[文字起こしテキスト]</Input>
<Output type="list">不明な用語のリスト</Output>
</Step>
<Step id="2">
<Name>不明な用語の意味確認</Name>
<Condition>
<If>不明な用語のリストが空でない場合</If>
<Then>
<Instruction>
以下の不明な用語の意味を説明してください。文脈に合った意味を選択してください。
</Instruction>
<Input type="list">不明な用語のリスト</Input>
<Output type="dictionary">用語とその意味の対応</Output>
</Then>
<Else>
<Action>次のステップに進みます。</Action>
</Else>
</Condition>
</Step>
<Step id="3">
<Name>クレンジング</Name>
<Instruction>
以下の文字起こしテキストをクレンジングしてください。
* 誤字脱字を修正してください。
* 不要な相槌や言い直しを削除してください。
* 前のステップで確認した用語の意味を踏まえ、文脈に合わない単語を修正または削除してください。
</Instruction>
<Input type="text">[文字起こしテキスト]</Input>
<Input type="dictionary">用語とその意味の対応(ステップ2のアウトプット)</Input>
<Output type="text">クレンジング後のテキスト</Output>
</Step>
<Step id="3.5">
<Name>クレンジング結果のユーザー確認</Name>
<Instruction>
上記のクレンジング結果を以下に示します。問題がないか確認してください。修正が必要な箇所があれば、具体的に指示してください。(例:「3行目の『ですます』を『である』調に変更」「5行目の『えーと』を削除」) 問題なければ「OK」と入力してください。
</Instruction>
<Input type="text">クレンジング後のテキスト(ステップ3のアウトプット)</Input>
<Output type="text">ユーザーからのフィードバック</Output>
</Step>
<Step id="4">
<Name>議事録作成</Name>
<Condition>
<If>ユーザーからのフィードバックが「OK」の場合</If>
<Then>
<Instruction>
以下のクレンジング後のテキストを、以下のフォーマットに従って議事録として整形してください。
## 議事録
**会議名:** [会議名]
**開催日時:** [開催日時]
**開催場所:** [開催場所]
**参加者:** [参加者名]
### 議題1: [議題1]
* [議題1の要点1]
* [議題1の要点2]
* ...
**決定事項:**
* [決定事項1](担当:[担当者名]、期限:[期限])
* ...
### 議題 2: [議題2]
* [議題2の要点1]
* ...
**決定事項:**
* ...
...
発言者名は「発言者A:発言内容」の形式で記述してください。
</Instruction>
<Input type="text">クレンジング後のテキスト(ステップ3のアウトプット)</Input>
<Output type="text">整形された議事録</Output>
</Then>
<Else>
<Action>ユーザーからのフィードバックに基づいてクレンジングを修正し、ステップ3.5に戻ります。</Action>
</Else>
</Condition>
</Step>
</Steps>
</Prompt>
利用時の注意点
- 機密情報: 音声データや議事録内容を外部のChatGPTに渡す場合、どこまで機密情報が含まれるかを社内規定と照らし合わせる必要があります。
- 音声認識精度: 下地となる文字起こしがうまくいっていないと、AIの要約も誤りが増えるため、録音環境やマイク設定が重要です。
- 費用面: ChatGPTのAPIやその他ツールを使う場合、利用量や文字数に応じた従量課金が発生することがありますので、あらかじめコストシミュレーションをすることが望ましいです。
専用の議事録作成AIツールの特徴
一体型サービスの強み
議事録作成AIツールは、音声認識・話者識別・自動要約などの機能がワンパッケージになっているのが一般的です。会議中にリアルタイムで文字起こしし、終了後には自動生成された議事録を受け取れるサービスもあり、操作手順が少なく社員にとって使いやすいというメリットがあります。
また、クラウド上で動作するタイプが多いため、録音データのアップロードがスムーズで、ブラウザからすぐに参照可能という利便性も高いです。
メリットと考慮点
- メリット
- UIが整備されており、特別なプロンプト設計をしなくても議事録が自動生成される。
- ベンダーによっては大規模導入やオンプレ対応など、企業向けのサポートがある。
- 考慮点
- 月額費用やライセンス数によってコストがかさむ場合がある。
- ベンダー依存度が高まり、カスタマイズ性が限定的なケースもある。
- データのセキュリティポリシーや保管方法を事前に確認する必要がある。
運用フローのイメージ
- 会議の予約・ツール設定: 会議時間が近づくと、自動文字起こしをオンにするかを選択。
- リアルタイムで文字起こし: 参加者が発言すると画面に文字が反映される。話者名を自動でラベル付けする機能がある場合も。
- 終了後に要約レポートが生成: システムが議題ごとに要点をまとめたレポートを作成。
- 担当者チェック: テキストを最終チェックし、不備があれば修正。
- 保存・共有: 社内ポータルなどで閲覧可能にしておく。
社内導入事例
多くの企業がこのような一体型ツールを導入して、「会議後のドキュメント作業が楽になった」「要旨が整理された状態で関係者に素早く共有できる」という声を上げています。一部では、海外プロジェクトとの情報共有スピードが増し、会議の重複が削減されたという報告もあるようです。
プロンプト活用 vs. 専用ツール—どちらが向いているか
比較視点
議事録作成を効率化するにあたり、「ChatGPTへのプロンプト利用」か「専用ツール利用」かという選択は悩ましいところです。以下の要素を検討すると判断材料になります。
- 費用
- プロンプトだけであれば初期コストを抑えられる半面、使うAPIや文字起こしツールのライセンス代が積み重なる可能性もある。
- 専用ツールは導入費やサブスクリプション料金が明確な一方、社内全員が使うとコストが大きくなる場合も。
- セキュリティ
- プロンプト活用:外部サービスに依存する部分をどう管理するかが課題。
- 専用ツール:ベンダーのセキュリティ認証やオンプレ対応があると安心感が高い。
- 運用のしやすさ
- プロンプト活用:柔軟にフォームを変えられるが、社員ごとの熟練度に差が出やすい。
- 専用ツール:画面が整っていて簡単に使える反面、カスタマイズ性が低いケースもある。
社内規模と会議形態に合わせる
小規模な部署やチームで「まず試してみたい」という段階であれば、プロンプト活用で始めるのが取り組みやすいでしょう。一方、会議が多く、全社のDX推進を目指したいような大規模導入の場合は、専用ツールの一貫したサポートが頼りになることが多いです。
実際には、両方を併用するケースもあり、「重要会議は専用ツール、簡単な社内ミーティングはプロンプト活用」と使い分けする企業もあります。
例:PoCからのステップ
- 小さなミーティングで録音+文字起こし+ChatGPT要約を試す。
- 効果や課題を把握し、必要があれば一体型ツールを比較検討する。
- 部門管理者・情報システム部門・法務部門などと合意の上、スケールアップして全社運用へ。
このように段階を踏むことで、失敗リスクを抑えながら導入を進められます。
比較項目 | プロンプト活用 | 専用ツール |
---|---|---|
初期コスト | 低い(APIやツールの従量課金) | 導入費用やサブスクリプション料金が必要 |
セキュリティ | 外部サービス依存による管理課題あり | ベンダーの認証やオンプレ対応で安心感が高い |
カスタマイズ性 | 柔軟にフォーマット変更可能 | カスタマイズ性が限定的な場合あり |
使いやすさ | 社員の熟練度により差が出やすい | 整備されたUIで簡単に使用可能 |
向いている規模 | 小規模な部署やチームでの試験的導入 | 全社的な大規模導入 |
サポート体制 | 自社で対応が必要 | 企業向けサポートあり |
導入時に気をつけるべきポイント
セキュリティとコンプライアンス
議事録には機密情報が含まれる場合が多いため、データの取り扱いには注意が必要です。外部サービスに送るときは、どのように暗号化されているか、データがどこに保管されるかなどを必ずチェックしましょう。社内規定で厳しい制限があるなら、オンプレやプライベートクラウドを検討することも選択肢になり得ます。
音声認識の精度向上策
AIに任せる以前に、録音クオリティが悪ければ議事録精度は下がってしまいます。以下のような対策で精度をアップさせると、後工程が格段に楽になります。
- マイクの正しい配置
- ノイズ対策(静かな部屋を利用)
- 発言が重ならないように司会進行
社員教育
実は、生成AIの活用にはリテラシー向上が欠かせません。社員がプロンプトの書き方を理解していないと、「要領を得ないアウトプットばかりで成果が出ない」という状況に陥りがちです。専用ツールを導入していても、基本的な操作やテキストチェックの仕方を周知しないと、導入後に混乱を招くことがあります。簡易マニュアルや、研修時のデモンストレーションが効果的です。
リスクマネジメント
万が一、誤った要約が出たり話者を取り違えたりすると、会議内容の誤解を生む恐れがあります。特に法的拘束力のある会議(取締役会など)では、議事録の正確性が重要ですので、AIに任せきりにせず最終確認を人間が行う運用を定着させる必要があります。
また、外部の顧客や取引先が参加する会議で録音を行う際は、事前に了承を得るなど、プライバシーや契約面での配慮が欠かせません。
項目 | 内容 |
---|---|
セキュリティとコンプライアンス | ・機密情報の取り扱いに注意 ・データの暗号化と保管場所の確認 ・必要に応じてオンプレ/プライベートクラウドの検討 |
音声認識の精度向上策 | ・マイクの正しい配置 ・ノイズ対策 ・発言の重複を避ける司会進行 |
社員教育 | ・プロンプトの書き方の理解 ・基本操作の周知 ・簡易マニュアルや研修デモの実施 |
リスクマネジメント | ・人間による最終確認の実施 ・法的文書の正確性確保 ・録音時の事前承諾取得 |
導入後の運用とフォローアップ
継続的な検証と改善
AIを導入して終了ではなく、定期的に「議事録がうまく作成されているか」「社員が困っていないか」をヒアリングすることが大切です。たとえば月に一度の改善会議を設け、音声認識の質や要約の的確性を振り返る仕組みを作るとよいでしょう。
新たな機能活用
音声認識技術や大規模言語モデルは常に進化しています。アップデートによって翻訳や要約の精度が向上する場合もあれば、追加機能として感情分析やタスク管理連携などが提供されることもあります。社内DX推進の一環として、活用領域を拡張するチャンスがあるかもしれません。
ナレッジシェア
会議内容を蓄積していけば、社内のナレッジデータベースとして有効活用できるかもしれません。過去の議論を検索しやすくしたり、似た案件のミーティング記録を参照したりすることで、情報の再利用が可能になります。特に教育研修担当や新入社員にとって、過去の会議ロジックが共有されているのは大きな利点です。
社員のモチベーション向上
議事録作成から解放されることで、スタッフが議論に集中できるという声も聞かれます。要点が自動的に整理される分、アイデア出しや戦略的な話し合いに労力を回せるようになり、「会議がより生産的になった」と感じる社員が増える可能性があります。一方で「AIがまとめてくれるから自分は気にしなくていい」と誤解する人が出ないよう、ルールと方針を社内全体で共有しておくとよいでしょう。
まとめ
生成AIを使った議事録作成は、ChatGPTのプロンプト活用と専用ツール導入の二つの大きな選択肢があります。それぞれ費用やセキュリティ、カスタマイズ性など特性が異なるため、まずは小規模からPoCを実施してみるのがおすすめです。録音環境や社内リテラシーを整備し、最終チェックは人間で行うなど運用設計をきちんと行えば、効率化と正確性を両立できるでしょう。ぜひ自社の状況に合わせて最適なAI活用プランを検討し、会議の成果を素早く共有する仕組みづくりを進めてみてください。
株式会社ProofXでは、生成AIを活用した業務改革から事業創出、システム開発を行っています。
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